大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2411号・昭40年(ネ)2450号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕 (抗弁)

(一) 仮に、控訴人と被控訴会社との間に控訴人主張の……各消費貸借が締約された事実並びに同三の消費貸借及び債務引受契約が成立した事実が認められるとしても、右各契約は、いずれも、控訴人が被控訴会社の代表取締役在任中になされたものであり、控訴人と被控訴会社との間の右各取引は、債務引受はもとより、金銭消費貸借についても日歩五銭という可成り高額な利息の支払を約するものであつて、両者の利害は相反するものであるから、いずれも、商法第二六五条にいう取締役が自己のために会社と取引する場合に該当し、取締役会の承認を得なければならないところ、当時の被控訴会社の取締役は、控訴人、被控訴人金児三郎及び訴外鈴木増太郎の三名であつて、取締役会の運用につき資本金額の大小によつて差異のあるべき筈はなく、右各取引について取締役会が招集せられた事実もその決議がなされた事実もないから、右取引は、いずれも無効である。

(抗弁に対する答弁)

(一) 下記(一)の主張事実中、控訴人が当時被控訴会社の代表取締役であり、当時の被控訴会社の取締役としては被控訴人ら主張の三名が在任していたことは認めるが、その余の事実は否認する。

(イ)、訴外鈴木増太郎は控訴人の妻の実父で、被控訴会社取締役としての職務一切を控訴人に任せていたものであるから、他の残りの取締役である控訴人と被控訴人金児三郎との合意があつたものである以上、取締役会の承認があつたものというべきである。

(ロ) 仮に右が理由がないとしても、被控訴会社は、右各取引がなされた後直近の決算期において、決算書を作成し、取締役会においてこれを承認しているから、取締役会はこれにより右各取引につき事後承認を与えたものというべきである。

(ハ) 仮に右も理由がないとしても、被控訴人らは、被控訴会社代表取締役退任後の控訴人に対して、昭和三四年八月三一日前記各債務を承認したから、このときに取締役会の事後承認があつたものである。

そして、取締役会の承認は事後承認であつても有効であるから、前記各取引は有効である。

〔判決理由〕そこで、被控訴人らの抗弁について判断する。

さきに認定した金一、〇〇〇、〇〇〇円の消費貸借契約及び金五、〇〇〇、〇〇〇円の借受金債務引受契約が控訴人と被控訴会社との間に締結された当時、控訴人が被控訴会社の代表取締役であつたことは、当事者間に争いがないから、これらの契約が取締役会の承認を要する取引にあたることはいうまでもない。

ところで、当時被控訴会社の取締役として在任したものが控訴人、被控訴人及び鈴木増太郎の三名であることは当事者間に争いがなく、そのうち鈴木増太郎が控訴人の妻の実父であつて取締役の職務をほとんど控訴人に任せていたこと、及び、前記契約については、残りの取締役である控訴人と被控訴人金児三郎との間で合意があつたことは、いずれも、弁論の全趣旨によつて認められるが、これらの事実だけからでは取締役会の承認があつたものとみることはできない。

また、控訴人は、被控訴会社においては前記各契約がなされた後直近の決算期において、決算書を作成し、取締役会においてこれを承認しているから、取締役会はこれにより事後承認を与えたものというべきであるというが、さような決算書の承認があつたとしても、それだけでは取締役会が前記各取引につき承認を与えたものと速断することはできない。

しかし、<証拠>によれば、前記のように控訴人が被控訴会社の代表取締役を辞任した後、被控訴人らが控訴人に対して、昭和三四年八月三一日前記各債務を承認した事実が認められる。これに反する証拠はたやすく採用できず、他にこの認定を覆えすに足りる証拠はない。

したがつて、よし、さような債務の承認によつて、直ちに、前記各取引について有効な取締役会の承認がなされたものとはいい難いとしても、その債務の承認がなされたことのほか、控訴人らが、これまで(訴訟の内、外を問わず)、かような瑕疵を主張したことのないこと―弁論の全趣旨によつて明らかである―を考えあわせると被控訴人らが、今日、右取締役会の承認の欠缺を理由にして行為の無効を主張することは、ひつきよう、信義誠実の原則に反し、許されないところところといわなければならない。

(久利馨 三和田大士 栗山忍)

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